執行文とは?
その時点で債務名義に執行力があることを証明した文書が執行文です。
債務名義があれば強制執行を申し立てることができるのに、なぜ執行文が必要になるのかと思われる向きもあるかもしれません。
しかし、判決や調書が作成された後に債務者が死亡したり、法人の場合は合併等により債務者の名義が変わってしまうということもあり得ます。
また、請求権に条件が付いていたりする場合もあり、その債務名義がただちに強制執行を行えるかどうか裁判所にはわかりません。
そこで、債権者が申し立てた時点で、債務名義に執行力があるかどうかの確認を行い、その債務名義のままで行えると判断されれば、それを証明する執行文が付与されます。
この手続きのことを「執行文の付与」といいます。
強制執行を申し立てる際には、債務名義に必ず執行文を付与してもらうことが要件となりますが、少額訴訟の判決、仮執行宣言付支払督促、保全命令については例外となり、不要です。
執行文にはどのような種類があるのか
執行文には、以下の3種類があります。
単純執行文
その債務名義の内容のままの執行力を証明するものです。
要件としては、債務名義が存在し、請求権が表示されていること、債務名義の執行力がすでに発生し、存続していることということになります。
承継執行文
例えば、債権譲渡などで、債務名義に記載された名義以外の人物に債権が移転した場合、再度、債務名義を取得する無駄を省略するために、承継執行文があります。
付与にあたっては、後述するような文書による証拠で証明できれば付与されますが、文書以外の証拠では付与されませんので注意が必要です。
条件成就執行文
債務名義に条件が付いている場合、例えば、ある条件が到来したのちに金銭の支払いを行うというような条件が付いている場合には、その条件が達成したことを債権者が文書によって証明することにより付与されるのが条件成就執行文です。
付与するにあたっては、後述するような文書によって証明できる場合のみ付与されます。
債権者が証明すべき条件としては、停止条件、不確定期限、債権者の先履行給付、催告、解除権の行使などがあります。
承継および条件成就執行文の証明
付与のために証明が必要な場合の文書としては、以下のようなものがあります。
- 相続 ⇒ 戸籍謄本
- 合併 ⇒ 商業登記事項証明書
- 債権譲渡 ⇒ 内容証明郵便
文書による証明ができない場合は訴えを提起し、文書以外の証拠によって証明しなければなりません。
執行文付与の手続きについて
付与してもらうには、証明することのできる資料を保管している機関が行うことになります。
判決ならば訴訟を担当した裁判所、和解調書、調停調書ならば手続きを行った裁判所になります。
そして、確定判決や和解調書の場合は、1審の裁判所の書記官が付与しますが、上訴された判決の場合は、記録が1、2審どちらにあるかで付与の申立て先の裁判所書記官が異なりますので注意が必要です。
また、執行証書の場合は、その公正証書を作成した公証役場に申し立て、付与してもらいます。