銀行口座の差し押さえ | 預金を差押えて債権を回収する

ヘッダー背景

銀行口座の差し押さえをするには

銀行等の金融機関は、預金者の求めに応じ預金を支払わなければならない債務を負っています。

つまり、預金者からすれば銀行に対し債権をもっていることになります。

債権執行において、債務者の持つ預金債権を強制執行で差し押さえて、銀行を第三債務者として銀行から直接債権を回収することができます。

債務者が銀行口座に預貯金があれば、まとまった額の債権を回収できるといったメリットもありますが、銀行口座を差し押さえようとする際には、クリアしなければならない問題点も多く存在します。

銀行口座の差し押さえを行う際の問題点

財産隠しが容易

訴訟を提起されれば、敗訴し強制執行が行われることを想定し、債務者が財産を隠してしまう場合もあります。

不動産や債権でも給与債権などの場合は、なかなか隠せないものですが、その点預貯金であれば、口座から引き出すだけですので、財産を隠すことが容易だといえます。

債務者が口座から預金を引き出す可能性があるようでしたら、あらかじめ仮差押えを申立て保全を行っておく必要があります。

差し押さえても空振りに終わる可能性もある

財産隠しを目的に、債務者が銀行口座から預金を故意に引き下ろさなくても、差し押さえてみたが口座に預金が無かったという場合もあります。

また、残高が少なくこちらの債権額に満たないということもあります。

それでも金融機関1行につき裁判所に費用を支払わなければならず、残高が無くてもその費用は戻ってきませんので、そうしたリスクもあらかじめ考慮に入れておくべきでしょう。

銀行名や支店名を特定しておく必要がある。

民事執行規則第133条2項には、「申立書に強制執行の目的とする財産を表示するときは、差し押さえるべき債権の種類及び額その他の債権を特定するに足りる事項並びに債権の一部を差し押さえる場合にあつては、その範囲を明らかにしなければならない。」とあります。

これを銀行口座を差し押さえる場合に当てはめると、差し押さえようとする口座の、銀行名、支店名、預金の種類、口座番号を特定する必要があるということになります。

ただし、原則的に銀行名と支店名(支店名の要否については、判例等により見解が分かれるようですが)までを特定すれば申立てが行えるようです。

しかし、銀行口座の特定は、申立人自ら行う必要があり、あらかじめ債務者から預金のある銀行口座を聞いていない限り、非常に困難な作業と言わざるを得ません。

こうした場合に、特定するための手段として取れるものとして、以下のようなものがあります。

弁護士照会制度を利用する

これは、弁護士が官公庁や企業、事業所などにに対し、弁護士会を通じて証拠の収集や事実関係を問い合わせる制度です。

しかし、この弁護士紹介制度で銀行に問い合わせても、預金者の個人情報を開示することにより、後々損害賠償等を請求されることを懸念し、守秘義務を理由に解答が得られないことも多いのが実情のようです。

財産開示手続を利用する

裁判所に対して申立てを行うことにより、債務者に自ら所有する財産を開示させる制度が「財産開示手続」です。

しかし、債務者自ら正直にすべての財産を開示するとは限らず、また、財産開示期日前に財産を処分するなど、これも確実とは言えませんが、まずは利用してみるのも一つの手段かと思われます。

ヤマをはって差し押さえる

相手が企業など法人の場合には、会社資料等で取引先金融機関が公表されている場合があります。

そうした場合には、まずはそうした公表されている銀行をねらってみるのも一つの手段です。

個人であっても、一般的に口座を開設するのは、居住地近辺の銀行であったり、勤務先の近辺などの銀行に開設することも多いので、住所地や勤務先近辺の銀行を何行かピックアップし、山をはって差し押さえるという手段もあります。

ゆうちょ銀行の場合は貯金事務センター単位で

一般の銀行が支店単位で貯金を管理しているのに対して、ゆうちょ銀行は、各地域ごとに設置された「貯金事務センター」単位で管理が行われています。

貯金事務センターは全国に12か所あり、一つの貯金事務センターが管轄しているエリアは非常に広いです。

例えば、一般の銀行の場合は同じエリア内に複数支店があり、支店を絞るのも大変ですが、ゆうちょ銀行の場合には、管轄エリアが広いので、一つの貯金事務センターを差し押さえれば当たる確率が高いということになります。

請求債権の按分

複数の金融機関の口座を差し押さえの対象とする場合、請求債権は按分しなければなりません。

例えば、請求債権金額が50万円で、差し押さえる金融機関がA銀行イ支店とB信用金庫ロ支店と2つあったとします。

この場合、A銀行イ支店に20万円、B信用金庫ロ支店に30万円と按分します(按分の額は任意)。

この結果、A銀行イ支店の口座に50万円の預金残高があったとしても、20万円しか差し押さえることができませんので、申立ての際には、十分検討したうえで按分する必要があります。