動産執行で差押えることのできるものとできないもの

ヘッダー背景

動産執行の概要

動産執行とは、債務者の動産を差し押さえて、競売にかけて現金化し、債権の回収を図るものです。

動産執行の特徴としては、執行機関が裁判所ではなく、執行官が行うという点が挙げられます。

裁判所にいる執行官自らが債務者宅へ出向き、動産を差し押さえ、競売にかけるところまでを行います。

動産執行のメリット

財産価値の高い不動産の場合は、競売手続も複雑で一般素人が行うには手続き上も面倒ですが、それに比べ動産の場合は競売手続も比較的簡単なため、一般素人でも手軽に手続きを行うことができます。

また、家財道具などに札をベタベタと貼られると、債務者の心理的圧迫は大きく、それならば債権の支払いに応じようという心理的効果が狙えるというメリットもあります。

動産執行のデメリット

動産の場合は、執行官が実際に中に入ってみなければ、どのような財産があるのかなかなかわからないというデメリットがあります。

債務者が高価な動産を所有していれば、それなりの配当が期待できますが、それほど高価な動産を所有していなかった場合、中古品の家財道具等を競売にかけても落札者は少なく、結局、債権者自らが落札するか、知人に頼んで落札してもらうといった状況もあるようです。

そして落札されても、配当も少額ということもあり得ますので、そうしたリスクもある程度覚悟しておいた方がいいかもしれません。

動産執行の対象となるものとならないもの

動産執行の対象となるものとならないものがありますので、判断が難しい場合には、裁判所や弁護士などにあらかじめ相談しておくべきでしょう。

ここではどのようなものがあるのか、一例を記載してみたいと思います。

動産執行の対象となるもの

民法では、動産について「土地およびその定着物以外の物、ならびに無記名債権」と定められています。

「土地およびその定着物」とは土地に立っている建物ということになりますが、定着物であっても、例えばプレハブや庭園の庭石など、容易に土地から分離できるものは対象になります。

しかし、土地から分離できる定着物であっても、土地に担保権が設定されている場合には、それらの物に効力が及んでいる場合もありますので、あらかじめ、その土地の権利関係を調べておく必要があります。

「無記名債権」とは、例えば商品券などのように、債権者の氏名が記載されていない証券のことです。

自動車、バイク、航空機、船舶、建設機械については、通常、登録制度がありますので、不動産に準じた扱いがなされることがありますが、登録されていない場合には対象となります。

また、株券、国債、社債、約束手形、小切手などの有価証券も対象となりますが、裏書が禁止されていないものに限られます。

その他、商品、ペット、家畜などの動物も対象となります。

動産執行の対象とならないもの

上記民法で定められ、強制執行の対象である動産であっても、債務者や家族が当面生活していく上で欠くことのできない、最低限の衣類、寝具、家具、仕事で必要な道具等々は差し押さえることができません。

また、2ヶ月間の生活費として66万円の金銭、生活に必要な1ヶ月分の食糧や燃料についても対象とはなりません。

動産執行のおおまかな手続きの流れ

動産執行を申し立てる際のおおまかな手続きについてみていきたいと思います。

申立て先

対象となる不動産の所在地を管轄している地方裁判所の執行官

申立て書類の提出

申立てには、「動産執行申立書」という書類と添付書類を提出します。

添付書類は、以下のものです。

動産の場合は、債務者が対象となる動産を消費してしまったり、隠してしまうことも容易なので、強制執行を察知されることなく行われる必要性もあることから、執行と同時に債務名義を送達することもあります。

申立ての費用

執行官の手数料と強制執行の費用は、債権額をもとに算出されます。

申立書を執行官室の窓口に提出すると、保管金納付書が交付されますので、この納付書と費用を裁判所の会計もしくは裁判所内の銀行に納めます。

執行日時の決定と通知

申立てが受理されると、執行官との面会票が交付されます。

申立人は、面会票に記された日時に執行官室に出向き、具体的な日時や打ち合わせ、当日の落ち合わせ場所などを話し合います。

一般的には、申立て日から1週間以内に着手することを定め、その日時を申立人に通知することとしています。

競売

執行官によって差し押さえられた動産は、現金の場合は直接支払いを受けますが、現金以外の動産の場合は、競売によって現金化されます。

通常、差し押さえた日から数日後に競売の期日が決まります。

競売が終了すれば、その支払代金から債権者へ現金が支払われます。

配当手続き

債権者が複数いる場合、まず債権者間で話し合いますが、まとまらない場合は、裁判所が債権額に応じて分配します。

これを配当手続きといい、請求額の計算書を提出し、指定された日に裁判所に出頭します。