不動産執行のメリット、デメリットや手続の流れ

ヘッダー背景

不動産執行の概要

不動産執行とは、債務者が所有する不動産を強制執行により差し押さえ、競売によって金銭に換え、債権の回収を実現するものです。

通常、執行の対象となる不動産は、土地と建物です。

一般的に、債務者が単独でその不動産を所有している場合もあれば、他のだれかと共有しているという場合もありますが、共有している場合でも、その共有持分に対して強制執行を行うこともできます。

ここでは、不動産執行にはどのようなメリットやデメリットがあり、どのように手続きを行えばよいのかについてみていきたいと思います。

不動産執行のメリット

財産価値が高い

不動産は、一般的に高値で取引される資産価値の高い財産です。

競売にかけると市場価格よりも安くなると言っても、それでもまとまった金額の金銭に換えることができ、債権額が高い場合などは、一括で回収できる可能性もあるというメリットがあります。

財産隠しがしにくい

不動産は、他の動産や債権などと違って、移動したり隠したりしにくいというメリットがあります。

また、法務局などに行って登記内容をみれば、だれでもその不動産の状況や権利関係を確認することができ、事前の調査がしやすいのもこの不動産執行です。

不動産執行のデメリット

担保権設定がされていることもある

財産価値が高く、債権の回収の確実性も高いということになれば、同じように考える他の債権者にとっても魅力的な財産と言えます。

債権が発生した際に、万が一の時に備えて、不動産にあらかじめ抵当権などの担保件を設定しておくという債権者いてもおかしくありません。

不動産を強制執行しようと思っても、先に担保権が設定されていれば、当然その債権者が優先されてしまうというデメリットがあります。

手続きに手間と費用がかかる

不動産執行を行うには、裁判所の調査や鑑定評価の費用として納める予納金が高額であり、登記費用もかかってきます。

さらに、配当まで長くて2~3年の時間を要する場合もあります。

したがって、それなりの時間と費用がかかることはあらかじめ覚悟しておいた方がいいかもしれません。

不動産執行のおおまかな手続きの流れ

不動産執行を申し立てる際のおおまかな手続きについてみていきたいと思います。

申立て先

対象となる不動産の所在地を管轄している地方裁判所

申立て書類の提出

申立てには、「不動産強制競売申立書」という書類と添付書類を提出します。

添付書類は、以下のものです。

  • 執行力のある債務名義の正本
  • 送達証明書
  • 不動産登記簿謄本(全部事項証明書)
  • 公課証明書
  • 資格証明書(法人の場合)など

申立て書類の提出

申立手数料
申立て自体にかかる費用で、請求債権1つにつき4000円分の収入印紙を購入し、申立書に添付します。
予納切手
手続きの中で、関係者への郵送等に使われるもので切手で納めます。
切手の種類や枚数は裁判所によって異なりますので、確認が必要です。
予納金
競売物件の価額の調査や評価などのためにかかる費用です。
その額は、請求債権額によって異なりますのでこれも確認が必要です。
予納金は、競売代金が入れば還付されます。
登録免許税
強制競売の開始決定がなされ、裁判所が法務局に対して差押登記をするための費用です。
請求債権額の1000分の4の印紙を購入し納付します。

開始決定

申立てが受理されると、執行裁判所は強制競売開始決定を出します。

開始決定は登記簿に記載され、その不動産に対する差押えの効力が発生します。

裁判所による調査

開始決定が出されると、裁判所により不動産の現況の調査、および最低競売価額を定めるための評価が行われます。

この調査、評価に1年以上かかるのが通常です。

そして、競売の公告がなされ、競売期日が指定されます。

不動産の売却

競売期日には、競売または入札で最高値をつけた者が落札し、裁判所の競落許可決定により競落が決定します。

債権者はその競売代金から配当を受けることになります。